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「津波の霊たちー3・11 死と生の物語」読了。

津波の霊たちー3・11 死と生の物語」読了。 一言で表現するならば、衝撃を受けるほどよかった。

物語の舞台は、東日本大震災で児童74人を亡くした大川小学校。その後裁判が起こり、よく報道に出てくるので、知っている人も多いとは思うのだけれど、

震災から最近の出来事までを事細かに知っているひとはきっと少ないだろう。少なくとも、私は断片的にしか知らなかった。

なぜ子どもたちはいなくなってしまったのか? 助けることはできなかったのか? なぜ津波がくる直前まで避難しなかったのか? 生き残ったったひとりの先生は何をしていたのか? こどもたちの最後の瞬間はどんなものだったのか?

ただひたすらに真実が知りたいと願う親たちの狂おしいような思いを出発点に、6年間の物語がジワジワと進む。

一口に子どもを失った親といっても、みんな立場は違う。遺体がすぐに見つかった家族もいれば、ずっと見つからない家族もいる。一人っ子だった子もいれば、兄弟が助かった家族もいる。そういう微妙に異なる立場が、親たちの間に少しずつ溝を作っていく。

なんときめ細やかな取材と書きぶりだろう。

誰か一方の味方をすることなく、立場を異にする遺族の心の動きにぴったりと寄り添っていく。読者の私たちも、すぐそこにいるような、小さな息づかいさえも聞こえて来そうな、繊細な言葉。

そんな小さな物語が連なっていくなかで、日本という国や東北の地の文化、そして教育行政や政治の問題にも広げていく圧倒的な筆力。外国人記者だからこそ、見えてくる日本という国とその問題点。

読んでいくうちに、嫌が応にもタイトルにある「霊」という言葉に思いをはせる。霊は原題ではGhost。幽霊のこと。確かに霊魂の不思議な話も出てくるのだけれど、タイトルにある津波のゴーストは、なにも霊魂のことだけではないと、私たちは気づかされる。ゴーストは日本にどこにでもいる。

絶望的に悲しい話の連続なのに、読後感がなんと温かいことだろう。全編に人間への愛を感じる作品だった。 猛烈におすすめ。著者のロバート・ロイド・パリーさんに喝采。

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