実家の古いソファのこと
実家に、25年前に買ったアンティーク・ソファーがある。
ピンクで、ゴテゴテした柄で、「クラシカル」と「古臭い」の中間くらいソファ。例えるなら、ベルサイユ宮殿っぽい感じ。
当時、まだ高校生の私と中学生の妹と母の3人で、アンティークショップで見かけて一目惚れ。かなりの値段だったようだが、母が「えーい」と勇気とクレジットカードを出し、思い切って買ったものだ。まだバブルが弾ける前だったので、実家も少しはお金の余裕があったのだろう。(その数年後だったらきっと買えなかった)
それまで、我が家にはソファというものはなかった。椅子が好きだった父だけは大きなリクライニングする皮の椅子があったが、私たちは絨毯の上におかれた座布団でくつろいでいた気がする(正確にはもはや思い出せない)。
ソファが来て以来、ソファの素晴らしさを知った。
私たちも。そして二匹の猫たちも。みんなでソファをとりあった。
やがてソファは猫たちの爪や私たちが落とした食べ物なんかでボロボロになった。
去年、二十二年間生きた猫たちが相次いで他界。
その後、ソファを張り替えるべきか、
それとも買い換えるべきかがたびたび家族会議のトピックになる。
私は、クラシックな見た目のソファーにも飽きてしまい、今っぽいシンプルなものに買い替えを主張。母は「そうだねー」なんとなく合意しつつも、「でもいいものだし、張り替えられるなら張り替えたい」というスタンス。
すでに2年くらい話し合っているが答えは出ない。

先日、母が貼りかえの見積もりをとったらコストは約30万円だったそうだ。
おー、けっこう高いな!
30万円あればそれなりに良さげなソファーが買える。
そうだ、そうだ。だよね?
でもさー、と何かが「待った!」をかけるのだ。
不思議なもので、今はやっぱり張り替える方がいいなって心が傾いている。
だって、25年間このソファーは家の中心にあった。
もしうちからこのソファが消えたら、思い出までふうっと消えてしまう気がする。
父が家にいたあの頃。二匹の猫たち。夫との初めての出会い。私の娘が生まれたとき。毎日の夜ごはん。
考えてみれば、その無数の思い出にお金を払う方がいいに決まってる。
古くてどうしょうもないのにやっぱり手放せないものってあるよね。
断捨離、断捨離っていっても絶対に対象にならないの。
それは縁があるものってこと。
出会い、一緒に生きてきたもの。
ものといえどももの以上の存在。もはや家族・・・または自分の一部なのかも。
その後、つらつらと自分の持ち物の中で一番古いものについて考えてた。
私は、アメリカやフランスに住んでいて転居が多かったので、ずっと生き残っているものは本当に大事で長持ちするものだけ。
そのうち、どれか一つだけを選べといわれたら、
やっぱり生まれて始めて自分で選んだ買ったあの家具。。。かしら?
緑色のアンティークの棚。こいつは、まだ現役だ。うちにきて22年。
23歳の自分が選んだ家具がまだ現役ってなかなかすごい。
いいもの買ったじゃんって若い自分を褒めてあげたくなる。
ようし、ミドリの棚よ、君は家族に認定。一生いっしょにいよう。
みんなのそんな大事な古いものたちについて書いてみたくなったな。